「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」は、人気アクション映画シリーズの第3弾。ベイビーわるきゅーれシリーズは、独自のアクションスタイルと脱力系の日常描写を組み合わせた世界観で人気を博している。監督・脚本は引き続き阪元裕吾。物語は、殺し屋コンビのちさととまひろが宮崎県を舞台に繰り広げる冒険を描く。
あらすじ
杉本ちさと(高石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)の二人はミッションのため宮崎に出張する。一つ目のミッションを終え、束の間の休暇を楽しんでいた二人だが、まひろの誕生日を忘れていたちさとは、プレゼントを買う時間がないまま次の任務に向かうことになる1。その任務中、二人は同じターゲットを狙う一匹狼の殺し屋、冬村かえで(池松壮亮)と遭遇する4。冬村は史上最強と呼ばれる殺し屋だった。ちさととまひろは冬村によって窮地に追い込まれる。
シリーズ史上最高アクション
物語の内容もさることながら「ベイビーわるきゅーれナイスデイズ」は最高峰のアクション映画だ。そしてベビわる史上最高だ。尋常じゃない量の稽古を行ったことは素人でもわかる。まず伊澤彩織のスタントが爆発している。彼女の巧みな立ち回りから目を離すことはできない。そして対する池松壮亮も化け物級の動きだ。絶対に敵わない相手だと本能で感じる。二人の息の合った戦いは見ていて爽快だ。銃撃戦もただ弾が飛び交う量が増えただけではない。前作までよりも、弾丸飛び交う中での一人一人の所作が洗練されている。華麗な殺陣と共に、高石あかりの握る銃が火を吹きまくる。見逃せない戦闘シーンがてんこ盛りで終始圧倒される。
最高コンビ、ちさととまひろ。
杉本ちさとと深川まひろが最高のコンビであることは言わずもがな。今回二人は宮崎に出張。バカンス気分でビーチを駆け回り、街をはしゃぎ回る。本作では、まひろが20歳の誕生日を迎えることが物語の軸の一つとなっている。ちさとが一生懸命にまひろを喜ばせようとしているのが尊い。ちさとがプレゼントを用意してなくて焦ったり、約束を覚えていなくて取り繕ったりするけど、それも日常感があってたまらなく好き。お祝いに二人でこっそりビールを飲んで寝坊するシーンも良い。ショートケーキを手を使わずに食べるのも誕生日だからいいよねと思えてしまう。こういう平和で多幸感に溢れる日常があるから、緊迫のアクションが際立つのだ。二人の織りなすゆるいトークが心を癒す。
冬村かえでの孤独な道
池松壮亮演じる冬村かえではベビわる至上最強の殺し屋だ。体術は尚のこと、銃刀の扱いにも長けるオールラウンダー。殺しに対するストイックな姿勢は人間として尊敬できるくらいに立派と言える。だが彼にも苦悩があった。それは孤独であることだ。一人で孤独に戦う冬村と、二人で協力して生きるちさととまひろが対比される。冬村はちさととまひろとの最終決戦に備え、野良の殺し屋集団・ファームの残党を仲間にする。ファームの残党と車内で会話する彼はとても生き生きとして楽しそうだ。そしてそのシーンは冬村が本当に求めているものを物語っているように感じた。日々彼は修行僧のように黙々と殺しを続け、その反省点を日記に記す。しかしその姿は楽しそうには見えない。それでも殺し続けるのは、殺し続けた結果報われると考えているからではないだろうか。どうやって報われるのかはわからなくても努力し続けることはできる。冬村のひたむきな姿勢は将来への希望によるものではないだろうか。
ラストの戦闘で冬村はまひろに自身の殺し屋としての心情を語る。自分にも仲間が欲しかったと。彼は自分を信じて殺しを極めた。その道の先に希望があると信じて。だがその道の先には自分が求めていたものはなかった。彼が進むべき道は違っていたのかもしれない。彼が進むべきは目的地に最短で到達できる草木生い茂る獣道ではなく、遠回りの曲がりくねって平坦な道。ちさととまひろが歩む道。その道を彼は見落としていた。そしてその道を、自分以外の信頼できる人間とくだらない話をして笑いながら進むことができなかった。その選択が、戦いの雌雄を決したのかもしれない。
総括
ベイビーわるきゅーれはアクション映画の中でもトップクラスに位置すると断言できる。アクションシーンの全ての所作が洗練されており、凛として戦う俳優たちの姿に釘付けになる。またアクションだけでなく、シリーズを重ねるごとに登場人物の繊細な心理描写が増している。そしてちさととまひろの二人の関係も増している。二人はどこまで我々を魅了して離さない。
また、本作の撮影風景を記録した映画「ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ」も公開された。こちらは迫真のアクションシーンの裏側を存分に堪能できる作品となっている。これを観た後、もう一度「ベイビーわるきゅーれナイスデイズ」を観ることで、更なる作品の深みにはまることができる。
互いを心の底から心配し、いつでもどこでも支え合う、ちさととまひろ。マジでこの関係は永遠に続いて欲しい。すなわち、ベイビーわるきゅーれシリーズ永遠に続いて欲しい。阪元裕吾監督、マジでお願いします。
以上。