【映画】『SAW3』カリスマの後継者探しはムズイ

ソウ3のポスター スリラー
ソウ3

ソウシリーズ3作目となる『ソウ3』(2006)の監督は『ソウ2』(2005)に引き続きダーレン・リン・バウズマン。シリーズを生み出したジェームズ・ワンとリー・ワネルが制作総指揮を務める。ジグソウ/ジョン・クライマー役にトビン・ベル、アマンダ役にショウニー・スミスと前作からの俳優陣も続投している。本作はシリーズの中核となる重要な作品として位置づけられている。

あらすじ

医師のリンは、謎の女性アマンダに突然拉致され、多くの器具やマネキンが立ち並ぶ見知らぬ場所で目を覚ます。そしてアマンダはリンを医療器具が並ぶ病院の個室のような部屋に連れて行く。そこには脳腫瘍で余命わずかの殺人鬼ジグソウがベッドに横たわっていた。

    もちろんグロ注意

    SAW1作目はミステリー要素強めだが、2作目ではグロテスクな描写が増えていた。そして3作目となる本作も勿論、身の毛もよだつグロテスクで不快なシーンに溢れている。本作で最も衝撃的なゲームは、2作目の主人公エリックの妻ケリーがプレイヤーとなったゲームだ。彼女は天井から鎖で吊るされ、胸骨は両側から機械に固定されている。目の前には強酸性の液体が入ったビーカーがあり、底には鍵が沈められている。早く取り出さなければ液体の中の鍵が溶けてしまう程の強酸だ。彼女はその液体に手を突っ込んで鍵を取り出そうとするが、液体に手を入れるたびに皮膚が爛れて出血する痛みに耐えなくてはならない。やっとの思いで鍵を手に入れたケリーは震える手で鍵を鍵穴に差し込む。しかし胸の南京錠を解錠できても、胸骨に固定された機械を外すことはできない。必死の足掻きも虚しく彼女の胸骨は無慈悲にも観音開きにされ、内臓が全て顕になる。

    SAWに登場する拘束兼拷問機械は恐ろしくも魅力的だ。一目見ただけで力づくではどうにもできないという絶望的な印象を与える一方で、唯一無二の造形が新鮮な驚きをもたらす。次はどんな残忍な機械が登場するのか期待してしまうのも、SAWから目が離せない理由の一つになっているだろう。

    後継者・アマンダ

    アマンダはジョンに自身の全てを捧げることを誓い、彼の後継者となるためにゲームの運営を引き継ぐ。ジョンの跡を継いでゲームを執り行うアマンダだが、彼女の作成したゲームはクリアしたとしても扉が塞がれていたり、最終的に殺されてしまったりする。彼女ははなからプレイヤーにゲームを攻略させる気がないのだ。そして回想シーンでは、アマンダが1作目のゲームのアシスタントをしていたことが明示され、まだ生きているアダムをビニール袋で窒息死させていたことも判明する。又作品内での言及はないが、1作目のゲームの鍵を浴槽に放り投げる回想シーンが映る。これはジョンの意図しない行動だったのではないだろうか。なぜならジョンはゲームを攻略できるように設計するはずだからだ。鍵を浴槽に入れてしまうと、1作目のように鍵は浴槽の排水口から流れてしまい、脱出はほぼ不可能になる。恐らく彼女はジョンに全てを捧げると誓いつつ、自分の信条を織り交ぜて行動していたのではないだろうか。本作でもジョンの命令にすぐに従わなかったり、自身の感情に任せて振る舞う場面が多く見られる。そしてアマンダの作ったゲームは、ジョンの思想と乖離している。ジョンはどんなに過酷な試練を与えたとしても、その試練を乗り越えて生きようとする者には生きる選択肢を与える。生きることの価値を実感させるための拷問なのだ。しかしアマンダが行なっていたのは、ただ苦しめて殺すための拷問だ。アマンダは表面的にジョンの真似事をしていたに過ぎず、内面までトレースできていなかった。アマンダは初めからジョンの思想を理解できておらず、それは最期まで果たされなかった。

    真のジグソウは彼一人

    終盤、アマンダは医師・リンを銃で撃ったのち、それを見たリンの夫・ジェフに撃たれてしまう。試されていたのはリンではなく、アマンダだったのだ。アマンダはジョンの意図に反して独断で行動する癖があった。また彼女の作るゲームは攻略不可能なものばかりだったために、ジョンは彼女を後継者とすることをためらっていた。アマンダが絶命したのち、ジョンはジェフに最後のゲームを与える。今回のゲームで自身を苦しめた張本人である自分、ジョンを赦すか否かというものだ。ジェフは復讐心に駆られジョンの喉元を電動ノコギリで切り裂く。しかしそれもジョンの想定の範囲内だ。ジョンはテープの音声を流し、ジェフにゲームオーバーだと伝える。リンの頭は爆弾で吹き飛び、彼の娘のコルベットが監禁されていることが告げられる。

    何手先まで彼はゲームの展開を想定しているのだろうか。彼の類稀な頭脳には感服する。また、彼のゲームにははっきりとした思想がある。彼は拷問好きの快楽殺人鬼ではなく、生命の尊さを伝える啓蒙主義者なのだ。そして彼自身の生に対する執着心は尋常ではない。私は彼自身が生きたいがためにゲームを仕組んでいるように思える。本作では医師・リンをターゲットにすることで、自身の治療をしてもらおうと考えた。また、自身の心臓が止まった時、リンの首に装着した爆弾が爆発すると脅すことによって治療せざるを得ない状況を作った。そして頭蓋骨を切り開く手術を行なってもらったことで彼は一命を取り留めた。そして終盤ジェフの娘のコルベットの居場所は自分しか知らないとジェフに告げることで、喉を切り裂かれた状態であっても自分の命が助かる可能性を賭けた。もしジョンがプレイヤーとしてゲームに参加したなら、彼は必ずゲームを攻略するだろう。なぜなら彼自身が誰よりも生きることを大事にしているからだ。ジグソウと名乗れる存在は、生きようとする意志を心から理解できている彼一人のみだ。

    総括

    特定の状況下での緊張感やサスペンスを強調した映画ジャンル「ソリッド・シチュエーション・スリラー」の代表として続くソウシリーズ。逃げ場のない中で行われる痛々しくグロテスクな描写が満載のため、監禁や拷問などのシーンを好んでみる方なら満足できるだろう。本記事執筆時点で10作目となる『ソウX』(24)まで公開されており、11作目となる『ソウXI』の公開も発表されている。人々が限界のスリルを求める限り、ソウシリーズは続くだろう。

    以上。

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