【映画】『X エックス』と『Pearl パール』夢を見続けることの恐ろしさ。

スラッシャー・スプラッター

『X エックス』と『Pearl パール』は、A24が製作したホラー映画シリーズの一作目・二作目だ。このシリーズは3部作として企画されており、『X エックス』『Pearl パール』、そして『MaXXXine』(2024年7月5日アメリカ劇場公開/日本公開未定)で構成されている。A24は『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』などの話題作も手がけたことで知られる製作会社で、『X エックス』『Pearl パール』もその路線に沿った作品だ。この映画は海外メディアから高い評価を受け、映画批評サイトRotten Tomatoesでは96%フレッシュを獲得し、「2022年最高評価のホラー映画」と評されたほどだ。

また、『X エックス』はA24映画として初めてのシリーズ化作品としても注目を集めている。タイ・ウェスト監督が手がけ、ミア・ゴスが主演を務めるこのシリーズは、70年代のスラッシャー映画にオマージュを捧げながら、新しい視点でホラー映画を描き出している。『X エックス』は、1979年を舞台にしたスラッシャー映画で、若者たちが老夫婦に襲われる物語。この老夫婦の妻・パールが次作の主人公であり、彼女の行動や性格が物語の中心となっている。一方『Pearl パール』は『X エックス』から遡ること60年前の前日譚。スターを夢見た少女・パールは、どのようにして無慈悲かつ残忍なシリアルキラーへと変貌していったのかを描く。

両作品は、監督タイ・ウェストと主演のミア・ゴスが手掛け、ゴスは『Pearl パール』の脚本と製作総指揮も務めている。当初は監督のタイ・ウェストは『X エックス』だけを製作する予定だった。しかし『X エックス』のために作ったニュージーランドの農場セットを一作だけで壊すのはもったいないと考えた。そこで同じセットを使って『Pearl パール』を撮ることを考えた。『Pearl パール』の脚本にはゴスも参加し、わずか2週間で書き上げた。つまり『X エックス』の撮影が始まる前に『Pearl パール』の脚本が完成していたのだ。このような経緯があったからこそ、『X エックス』には『Pearl パール』の要素が巧みに組み込まれている。例えば『X エックス』で「ブロンドが嫌い」というパールの台詞があるが、『Pearl パール』を観るとその理由は明らかにされる。『X エックス』『Pearl パール』と続けて観ることで、物語に散りばめられた細かな要素が線で繋がり、良質なカタルシスを実感できる。

何と言っても最高なのは、ミア・ゴスは『X エックス』でマキシーンとパールの一人二役を演じ、『Pearl パール』ではパール役として主演を務めている点だ。現在の主人公と、過去の主人公が同じ役であることは、劇中の二人の関係性をより強固なものにする。『X エックス』でパールはマキシーンに若かりし日の自分の姿を重ねている。劇中では、マキシーンのベッドにパールが入り込むシーンがある。そこでパールは、まるで過去の思い出に浸るかのような表情でマキシーンを見つめ、優しく穏やかな手つきでマキシーンの体のラインをなぞる。若さを二度と取り戻せないことは知っている。それでも、マキシーンに触れ、傍らで眠ることで、パールは若き自分を鏡に写しているかのような気持ちでいられるのだ。

そして『Pearl パール』のエンディングの笑顔のシーンはあまりにも強烈だ。映画の終盤にして最も印象に残るシーンと言っても過言ではない。実はこのシーンは台本にはなく、ミア・ゴスの即興演技によるものだったそうだ。監督のタイ・ウェストは、ゴスの演技にひどく感銘を受け、カットをかけずに撮影を続けたと言われている。このシーンは非常に長く、パールが見せる泣き笑いの表情は、観客に嫌でもパールの心情を考えさせる。オーディションのステージで見せた笑顔が喜びに溢れているものであることに対し、エンディングの笑顔は悲しみに満ちている。ステージでの笑顔は芸能界で華々しく生きるスターとしての笑顔。一方でエンディングでの笑顔は寂れた田舎で一生を終える農家の主婦としての笑顔。銀幕を隔てているのにも関わらず、パールの心情は痛いほど我々観客に伝わってくる。夢を諦め、絶望を隠し、感情を押し殺した表情は、映画を見終わった後も深く心に刻まれる。

私はこの2作品を見て、いつまでも夢を見続けることの恐ろしさを知った。私はまだ20代だが、いつまでも夢を見続けられるように、心は若いままでいたいと思っている。しかし心は20歳のままで身体は80歳になっていたなら、どんな感情なのだろう。心が若いまま歳をとってしまうと、心と身体の乖離に耐えられなくなってしまうのではないか。心も歳をとっていくことを意識して、身体の年齢に順応させることが、人生全体を通して幸せに生きていくために重要になるのではないのだろうか。心を若く維持し続けようとすると、心と身体の年齢が徐々にズレていく。心はいつまでも将来に夢を見続ける一方で、年々身体の機能は衰え、死に近づいていることを実感する。夢は人生のどこかで諦めなければいけない。この残酷な真実を受け入れなければ、パールのような絶望を味わってしまうだろう。

『X エックス』と『Pearl パール』を両方観ることで作品の世界に奥行きが出る。『MaXXXine』の日本公開が待ちきれない。

以上。

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