【本紹介】「恐怖の正体―トラウマ・恐怖症からホラーまで―」春日武彦―なぜ私たちは恐怖するのか―

概要

先の見えないトンネル、街灯に群がる虫、ガラス張りの床、遊園地のピエロ…

あなたが怖いと感じるものは何ですか。

わたしたち人間には、何かしら怖いと感じるものがあるはずです。

恐怖をどう定義するか。

恐怖症は様々のものが存在するが、なぜ特定のものが恐怖を呼び起こすのか。

恐怖を抱いたときの時間の流れはなぜ遅くなるのか。

など、著者が精神科医として恐怖に苦しみ続ける患者を長年診てきた経験、

さらには著者自身のもつ恐怖症から、恐怖の正体についてを分析します。

おすすめポイント①著者の巧みな表現描写

著者は精神科医です。しかしながら文章が上手すぎます。

恐怖を煽る表現が秀逸で、嫌でも鮮明に恐怖を感じることができます。

なぜこんなにも恐怖を具体的に言い表すことが出来るのかと感心しました。

電車で轢かれてしまう老人の話などは、あまりにも生々しく残酷な描写に不快感を覚えました。

一方で著者の書いたホラー小説を読んでみたいとも思いました。

精神科医が書くホラー小説…とんでもなく危険な作品になりそうで恐ろしいですが…。

おすすめポイント②興味深い「恐怖の定義」

著者は恐怖を構成する三つの要素を挙げて、以下のように恐怖を定義していました。

①危機感、②不条理感、③精神的視野狭窄しやきょうさく―これら三つが組み合わされることによって立ち上がる圧倒的な感情が、恐怖という体験を形づくる。

③精神的視野狭窄は、追い詰められて無意識に恐怖の対象に焦点を絞り込んでしまう結果、恐怖の対象で心が支配され、他のことを認識できなくなることです。

私は小さな頃、人型ロボットがとても怖かったです。

ロボットの中には配線や基板があります。

人間の形をしているのに、基盤や配線が中に存在していることに嫌悪感を強く感じていました。

人の皮を被り感情があるように見せかけて、実際は何も思考していない無機物のロボットは、幼い私を震え上がらせる程気味が悪かったです。

今は恐怖を強く感じたりはしませんが、人型ロボットが喋っている様子は不穏に感じます。

ロボットという何か得体の知れない存在によって危害を加えられるかも知れないという危機感。

人間じゃないのに人間の形をしているという不条理感。

人型ロボットの存在ばかりを気にしてしまう精神的視野狭窄。

確かに著者のいう恐怖の定義と照らし合わせて、私の恐怖の感情は説明できます。

長年精神科医として恐怖に怯えて生活する人々を見てきたことで、恐怖という曖昧な感情を簡潔に定義できたのでしょう。

まとめ

今回は 「恐怖の正体―トラウマ・恐怖症からホラーまで―」春日武彦 を紹介しました。

著者は精神科医として様々な患者と接してきた結果、恐怖に対して鋭い洞察を得ています。

さらに小説や映画に造詣ぞうけいが深く、様々な作品で表現される恐怖が数多く分析しています。

しかしながら学術的に文章が書かれているわけではなく、特別難解というわけでもありません。

わかりやすく巧みな表現を駆使して恐怖を描写しており、誰でも直感的に説明を理解できます。

万人が感じたことのある恐怖を呼び起こすことのできる著者の技量に感嘆しました。

この本を読み進めていくと、恐怖の正体の輪郭りんかくを掴むことが出来ます。

恐怖の正体に近づくことで、未知による恐怖感が薄まっていくように感じました。

是非この本を手に取って、あなたも恐怖の正体と向き合ってみませんか。

以上、村崎でした!

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